きのみきのまま

女子大生の読書備忘録

『グスコーブドリの伝記』宮沢賢治

タイトルにもなっている「伝記」を広辞苑で引くと「個人一生の事績を中心とした記録」とあります。私の好きな宮沢賢治さんですが、自分の伝えたいことを物語の中に落とし込まれている作品に魅かれます。

新編 風の又三郎 (新潮文庫)

新編 風の又三郎 (新潮文庫)

宮沢賢治(1896~1933)

岩手県花巻生まれ。盛岡高等農林学校卒。1921年から5年間、花巻農学校教諭。

1.あらすじ

ブドリはイーハトーブの森に暮らす樵の息子として生まれた。冷害による飢饉で両親を失い、妹と生き別れ、工場に労働者として拾われるも火山噴火の影響で閉鎖するなどといった苦難を経験するが、農業に携わったのち、クーボー大博士に出会い学問の道に入る。課程の修了後、彼はペンネン老技師のもとでイーハトーブ火山局の技師となり、噴火被害の軽減や人工降雨を利用した施肥などを実現させる。前後して、無事成長し牧場に嫁いでいた妹との再会も果たすのであった。 ところが、ブドリが27歳のとき、イーハトーブはまたしても深刻な冷害に見舞われる。カルボナード火山を人工的に爆発させることで大量の炭酸ガスを放出させ、その温室効果によってイーハトーブを暖められないか、ブドリは飢饉を回避する方法を提案する。しかし、クーボー博士の見積もりでは、その実行に際して誰か一人は噴火から逃げることができなかった。犠牲を覚悟したブドリは、彼の才能を高く評価するが故に止めようとするクーボー博士やペンネン老技師を冷静に説得し、最後の一人として火山に残った。ブドリが火山を爆発させると、冷害は食い止められ、イーハトーブは救われたのだった。

2.ブドリの殉死

「ブドリはみんなを船で帰してしまって、じぶんは一人島に残りました。」

ブドリがの殉死についての考えで、林修先生は「焼身願望」、北野大先生は「崇高な生き方」と対談のなかで言っている。林修先生のこの捉え方は、生きていること自体に罪の意識を持っている、生きているだけで迷惑をかけてしまうことに苦しむ宮沢賢治さんの苦悩があらわれているという。

3.焼身願望?

私自身、林先生の「焼身願望」という解釈を知って、今まで読んできた宮沢賢治さんの作品の根底にあるものが見えた気がした。確かに以前紹介した『よだかの星』にはそれが色濃く反映されているともいえるし、いろいろな逸話からもそうかもしれないと思った。その作品を深く知るには、他の作品に触れるだけでなく、そのひとの生きざまや考え方を知る必要があると思わされた。

www.knmknmm.com

[感想]

宮沢賢治さんは豊かな家に生まれているにも関わらず、貧しい人に意識をむけて社会との矛盾を感じています。「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という考えに、自分をとりまく世界や未来の人々の幸福のために、どこまで関心を示し、どこまで貢献することができるのかということを問われているような気がします。