きのみきのまま

女子大生の読書備忘録

『世界から猫が消えたなら』川村元気

私のお気に入りの一冊です。川村さんの初小説とのことですが、とても引き込まれてあっという間に読み切ってしまいました。佐藤健さん主演で映画化もされていますが、原作である本著を読んでほしいです。

世界から猫が消えたなら (小学館文庫)

世界から猫が消えたなら (小学館文庫)

川村元気(1979~)

『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『君の名は。』 などの映画を製作。

あらすじ

郵便配達員として働く三十歳の僕。ちょっと映画オタク。猫とふたり暮らし。そんな僕がある日突然、脳腫瘍で余命わずかであることを宣告される。絶望的な気分で家に帰ってくると、自分とまったく同じ姿をした男が待っていた。その男は自分が悪魔だと言い、奇妙な取引を持ちかけてくる。「この世界からひとつ何かを消す。その代わりにあなたは一日だけ命を得ることができる」僕は生きるために、消すことを決めた。電話、映画、時計……そして、猫。僕の命と引き換えに、世界からモノが消えていく。僕と猫と陽気な悪魔の七日間が始まった。

[感想]

挫折や喪失の中で人生の意味を自分の頭で考えもがいた人にしか書けない作品だと思わされました。なぜなら「不自由さと引換えに決まり事があるという安心感を得た」「家族はあるものではなくするものだった」などのフレーズが散りばめられていましたからです。生きたかったけど生きられなかった人生を後悔の中で思いながらも、自分の人生の尊さに気付きます。自分の余命を増やす代わりに、世界から何かを消す契約を悪魔と結ぶ喪失感は命より重いかもしれないという話です。大人に近づくたび、歳を取るたび、多くのものを失って生きているような気がします。私たちも悪魔と契約してるのかもしれないですね。