きのみきのまま

女子大生の読書備忘録

『ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来』ユヴァル・ノア・ハラリ

話題になっていたので読んでみました。最近ではスマホが登場して人々の生活に欠かせないものになったり、目まぐるしく世の中が変化していっています。著者は、格差が想像を絶するものになるといいます。

ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来

ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来

ユヴァル・ノア・ハラリ(1976~)

イスラエル人歴史学者。著作『サピエンス全史』(小社刊)は世界的なベストセラーとなった。

1.人間が新たに取り組むべきこと

「この数十年というもの、私たちは飢饉と疫病と戦争を首尾良く抑え込んできた」(p.10)

21世紀初期の今、平均的な人間は、干魃やエボラ出血熱やアルカイダによる攻撃よりも、マクドナルドでの過食が元で死ぬ可能性の方がはるかに高いそうです。そして、人間は不死を目指して真剣に努力する見込みが高いという。

2.人新世

「およそ四十億年前に生命が登場して以来、一つの種が単独で地球全体の生態環境を変えたことはなかった」(p.94)

地球の歴史は更新世、鮮新世、中新世のような年代区分に分けられていて、私たちは完新世に生きている。筆者は、過去七万年間は、人類の時代を意味する人新世と呼ぶほうがふさわしいかもしれないという。それは、この期間にホモ・サピエンスは地球の生態環境に他に類のない変化をもたらす、最も重要な存在になったと考えているからだ。

3.人間の輝き

「サピエンスが世界を支配しているのは、彼らだけが共同主観的な意味のウェブーーただ彼らに共通の想像の中にだけ存在する法律やさまざまな力、もの、場所のウェブーーを織り成すことができるからだ。」(p.187)

著者は、このおかげで、十字軍や社会主義革命や人権運動を組織することができるという。猫やその他の動物が客観的な領域に閉じ込められ、もっぱら現実を描写するためにコミュニケーションシステムを使っているのに対して、サピエンスだけが、そのような架空の存在を想像できる。

4.物語の語り手

「虚構と現実、宗教と科学を区別するのはいよいよ難しくなるが、その能力はかつてないほど重要になる」(p.219)

著者は、二一世紀にはこれまでのどんな時代にも見られなかったほど強力な虚構と全体主義的な宗教を生み出すだろうと予測する。

5.科学と宗教というおかしな夫婦

「現代社会は人間至上主義の教義を信じており、その教義に疑問を呈するためにではなく、それを実行に移すために科学を利用する」(p.244)

宗教は何をおいても秩序に関心がある。宗教は社会構造を創り出して維持することを目指す。科学は何をおいても力に関心がある。科学は、病気を治したり、戦争をしたり、食物を生産したりする力を、研究を通して獲得することを目指す。科学者と聖職者は、個人としては真理をおおいに重視するかもしれないが、科学と宗教は集団的な組織としては、真理よりも秩序と力を優先する。したがって、両者は相性が良いという。

[感想]

印象深かったのは、「私たちが物語がただの虚構であることを忘れたら、現実を見失ってしまう。すると、『企業に莫大な収益をもたらすため』、あるいは『国益を守るため』に戦争を始めてしまう。企業やお金や国家は私たちの想像の中にしか存在しない。私たちは、自分に役立てるためにそれらを創り出した。それなのになぜ、気がつくとそれらのために自分の人生を犠牲しているのか?」(p.219)という部分です。宇宙飛行士である毛利衛さんの「宇宙から国境線は見えなかった」というコメントを思い出しました。まだモラトリアムの時期にある大学生の私ですが、これからの人生について考えたりしました。