きのみきのまま

女子大生の読書備忘録

『ホモ・デウス 下: テクノロジーとサピエンスの未来』ユヴァル・ノア・ハラリ

人間は、ただアルゴリズムで、あるパターン則ってデータを処理しているだけらしいです。将来、人工知能が人間の能力を凌駕するようになったとき、資本主義や民主主義、自由主義は崩壊するのでしょうか?

ホモ・デウス 下: テクノロジーとサピエンスの未来

ホモ・デウス 下: テクノロジーとサピエンスの未来

ユヴァル・ノア・ハラリ(1976~)

イスラエル人歴史学者。著作『サピエンス全史』(小社刊)は世界的なベストセラーとなった。

1.現代の契約

「現代というものは取り決めだ」(p.50)

私たちは、生まれた日にこの取り決めを結び、死を迎える日までそれに人生を統制される。

2.人間至上主義革命

「中世のヨーロッパでは、代表的な知識の公式は、知識=聖書×論理だった」(p.50)

「科学革命は完全に異なる知識の公式を提示した。知識=観察に基づくデータ×数字だ」(p.51)

科学的な知識の公式のおかげで、天文学や物理学や医学を始め多くの学問領域が驚嘆するべき大躍進を遂げた。この公式の大きな難点は、価値や意味に関する疑問には対処できないこと。中世の有識者は盗んだり殺したりするのは悪いことだとか、人生の目的は神の命に従うことだとか、絶対に確信を持って断言することができた。聖書にそう書いてあるからだ。人間社会はそのような価値判断なしでは生き延びられないが、科学者には論理的判断を下すことができない。

3.研究室の時限爆弾

「科学は、自由意思があるという自由主義の信念を崩すだけではなく、個人主義の信念も揺るがせる」(p.114)

重要なのは、私たちには生まれてから死ぬまで(そして、ことによるとその先まで)変わることのない単一のアイデンティティがあるという感じをつねに維持すること。これが、私は分離不能の個人である、私には明確で一貫した内なる声があって、この世界全体に意味を提供しているという、自由主義の疑わしい信念を生じさせた。

4.知能と意識の大いなる分離

「大衆の時代は終わりを告げ、それとともに大衆医療の時代も幕を閉じるかもしれない」(p.186)

日本や韓国など、テクノロジーが進歩した国々では出生率が低下している。そこでは、減る一方の子供たちを幼少期から教育するために莫大な資金が投じられており、その一方でインドやブラジルやナイジェリアのような巨大な発展途上国がある。一部のエリート層は、次のように結論する可能性があると指摘する。無用な貧しい人々の健康水準を向上させること、あるいは、標準的な健康水準を維持することさえ、意味がない、一握りの超人たちを通常の水準を超えるところまでアップグレードすることに専心するほうが、はるかに賢明だ、と。

5.意識の大海

「あらゆる意味と権威の源泉として、欲望と経験に何が取って代わりうるのか?〔中略〕その候補とは、情報だ」(p.208)

最も興味深い新興宗教はデータ至上主義で、この宗教は神も人間も崇めることはなく、データを崇拝するという。

6.データ数

「データ至上主義は、人間の経験をデータのパターンと同等と見なすことによって、私たちの権威や意味の主要な源泉を切り崩し、一八世紀以来見られなかったような、途方もない規模の宗教革命の到来を告げる」(p.236)

ロックやヒュームやヴォルテールの時代に、人間至上主義者は「神は人間の想像力の産物だ」と主張した。今度はデータ至上主義が人間至上主義者に向かって同じようなことを言う。一八世紀には、人間至上主義が世界観を神中心から人間中心に変えることで、神を主役から外した。二一世紀には、データ至上主義が世界観を人間中心からデータ中心に変えることで、人間を主役から外すかもしれない。

[感想]

本書は、二一世紀には人間は不死と至福と神性を獲得しようとするだろうと予測することから始まります。そして、人間至上主義の夢を実現しようとすれば、新しいポスト人間至上主義のテクノロジーを解き放ち、それによって、ほかならぬその夢の基盤を損なうだろうと主張されています。サピエンスは自らをアップグレードし、神のような力を持つホモ・デウスとなることを目指すが、かえって墓穴を掘る結果になるというのが、著者が提示する一つの予測です。私はSF映画が好きなのか、とても興味深く読んでしまいました。十年後、二十年後、どのような世界になっているのか、想像するのは怖くもあり、楽しみでもあります。