きのみきのまま

女子大生の読書備忘録

『おぞましい二人』エドワード・ゴーリー

私は幼い頃に絵本を読んだ記憶はないです。ということは、物心ついて初めて読んだ絵本はこの作品になるのでしょうか。紹介してもらって興味を持ったのですが、エドワード・ゴーリーを初めて知りました。

おぞましい二人

おぞましい二人

エドワード・ゴーリー(1925~2000)

シカゴ生まれ。独特な韻を踏んだ文章と、独自のモノクローム線画でユニークな作品を数多く発表している。

1.内容

1965年に明るみに出た「ムーアズ殺人事件」。イギリスで、イアン・ブレイディ、マイラ・ヒンドリーという男女が4年にわたり5人の子供を残虐に殺して荒野(ムーア)に埋めていた事実が明らかとなった。2人は投獄され、ゴーリーがこの本を書いた時点では2人ともまだ服役中であった。「もう何年も本の中で子供たちを殺してきた」と自ら言うエドワード・ゴーリーが、この現実に起きた悲惨な事件によって心底動揺させられ、描いたものある。

2.エドワード・ゴーリー

絵本という体裁でありながら、道徳や倫理観を冷徹に押しやったナンセンスな、あるいは残酷で不条理に満ちた世界観と、徹底して韻を踏んだ言語表現で醸し出される深い寓意性、そしてごく細い線で執拗に描かれたモノクロームの質感のイラストにおける高い芸術性が、「大人のための絵本」として世界各国で熱心な称賛と支持を受けている。 また、幻想的な作風とアナグラムを用いた(Ogdred Wearyなど)ペンネームを幾つも使い分けて私家版を出版したことから、多くの熱狂的なコレクターを生み出した。2000年4月15日、心臓発作のため死去。享年75歳。

3.エドワード・ゴーリーの他の作品

『ギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとで』

ギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとで

ギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとで

名前にAからZまでの頭文字をもつ26人の幼い子たちが、それぞれに死んでいく話。

『不幸な子供』

不幸な子供

不幸な子供

裕福な両親のもとで暮らしていた女の子が、父親の死をきっかけに不幸のどん底に転落していく話。

[感想]

彼の他の作品も何冊読んでみました。上に紹介していますが、『ギャシュリークラムのちびっ子たち』は子供たちがアルファベット順に死んだり殺されたりする絵本で、『不幸な子供』は父親がそうとは知らず娘を轢き殺すという結末の絵本でした。それらは現実性を帯びていないのですが、この作品は現実に起きた出来事を、その事件を起こした2人の一生をなぞっています。この作品が伝えたいこととはズレているかもしれませんが、考えもつかないような悲惨な事件を犯す人間は、普通の人間であることだということを感じました。私は大学で法律の勉強をしていますが、犯罪を実行する人は生まれ育った環境が起因することが多いと感じています。犯罪者を肯定するわけではないですが、トルストイの「幸せの家族はどれもみな同じようにみえるが、不幸な家族にはそれぞれ不幸の形がある。」という言葉を思い出しました。