きのみきのまま

女子大生の読書備忘録

『ネットフリックスの時代――配信とスマホがテレビを変える』西田宗千佳

小学生の頃と比べて、テレビは見なくなってしまいました。私自身はネットフリックス契約していませんが、本書では、それに代表される映像の見方の変化が、我々の生活にもたらす影響を考察してあります。

西田宗千佳(1971~)

福井県生まれ。ネットワーク、IT、先端技術分野を中心に活躍するフリージャーナリスト。

1.ネットフリックスの衝撃

「ネットフリックス関係者は、ことあるごとに『我々は放送を置き換えようとしていない』と話す。」(p.39)

ニュースやスポーツ、バラエティのようなリアルタイム性の高いものは放送に向いており、ネットフリックスも手に出していない。しかし、映像を楽しむためのコスト構造の違いは、確実に、着実に放送にも影響を与えている。

2.迎え撃つ「ニッポンのSVOD」

「Huluでは(「妖怪ウォッチが」)放送初期から、テレビ放送後すぐに公開されるというかたちになっていた。」(p.63)

家事をしている時、Huluでの「妖怪ウォッチ」配信で、子どもたちだけではなくその親たちが喜んだ。そういうニーズが存在するのはごまかしようのない事実で、そうした視聴環境の変化こそが、VODというビジネスが我々にもたらす本質的な価値と言っても過言ではないという。

3.「テレビを見ない」時代と「イッキ見」

「それをどんな感覚で消費するかは、もはや消費者が決めることだ。」(p.107)

スマートフォンと高速ネットワークの普及により、どんどん「待つ」のが苦手になっている。小説やコミックの新刊を読み終わると、続きが半年後ではもう忘れてしまう。テレビの持つ「毎週」というサイクルも、ネットのスピードの前では「遅い」と言われてしまう。

4.音楽でなにが起こったか

「ディスクであろうがデータであろうが『所有するものを買う』スタイルだったものが、『聴くための権利を手に入れる』スタイルに変わろうとしているのである。」(p.115)

物理的な円盤を買う、というかたちがダウンロードに変わることは大きな変化である。流通が変わるということは、それを聴くための機器の市場も、曲を売るためのマーケティングも変わる。音楽と比べて映像ビジネスは、「同じ映像を1回しか見ない人が大半であることを軸にした興行」であり、そのうえに「愛着を持ったコンテンツを何度も消費したい人向け」のビジネスが重なる構造である、ということ。

5.「イッキ見」と「放題」で変わるコンテンツ

「見逃し配信やSVODの登場は、なにかを破壊するものではなく、生活の変化のなかで『静かに離れていく顧客』を引き止めるものであり、新しい消費スタイルを生み出すものだ、と筆者は考えている。」(p.216)

多様化にともなうコンテンツへの触れ方の変化こそが、いま起きていることの本質であり、そうしたことを軸に、機器や新たなコンテンツ、そして販売方法を考える時期に来ているという。そんな時にも、「コンテンツの中身が良くなければヒットしない」という原則は変わらない。

[感想]

2015年に執筆されたものですが、未だその変化にいることを実感しています。私自身も、音楽や映像を人並み以上楽しんでいますが、確かに楽しみ方が変わってきました。観ていたドラマは「TVer」で見逃し配信をみたり、買っていた音楽も今では「Apple Music」で流行りから懐かしい楽曲まで聴いています。まだテレビを見ている層も多いですが、これからどう変化していくのか少し楽しみでもあります。インターネットの技術が進むことで、何が変わるのか、また、ビジネスをしている人達は、何が変わろうとしているのかを見ているのか、それらに触れることができる面白い本でした。