きのみきのまま

女子大生の読書備忘録

『海の歴史』ジャック・アタリ

私は海が好きで、よく海をみるために旅行します。そんな海は、宗教、文化、技術、企業、国家、帝国の推移にきわめて重要な役割を果たし、水がなければ生命は存在しない、水は生命の乗り物だといえます。

海の歴史

海の歴史

ジャック・アタリ(1943~)

アルジェリア生まれ。フランス国立行政学院(ENA)卒業。

1.宇宙、水、生命 1300億年前~7億年前

「生命が多様化し、人類が登場する準備が整ったのである。」(p.33)

およそ44億4000万年前、地球の大気に含まれていた水蒸気は、濃縮して液体の水となって地表に降り注いだ。そして41億年前から37憶年前の間に、単細胞生命体である原核生物が海に現れた。生命の登場に関しては、宇宙からやって来たという説と、地球で形成されたという説があるらしい。

2.水と大陸 7億年前~8万5000年前

「こうして現代人の、海とは切っても切れない冒険が始まった。」(p.54)

200万年前、アフリカに肉体的に頑強で革新的なホモ・エレクトスが現れた。彼らは、死者を埋葬し、愛情を表現し、高度な組織をつくるようになった。そして、火を利用し始め、避難小屋をつくり、化粧品を発明した。

3.人類は海へと旅立つ 6万年前~紀元前1年

「海を支配する者が陸地をも支配する」(p.86)

カルタゴ人、ギリシア人、ぺリシア人は、地中海をめぐっていがみ合う。そして、ギリシアが歴史の中央舞台から消え去ると、ローマとカルタゴが対立する。

4.櫂と帆で海を制覇 1世紀~18世紀

この期間も、6万年前と同様に、櫂と帆すなわち人力と風力によって海上を駆け巡った。そして、またしても、経済、政治、社会、文化の支配層は、海と港を支配する術を心得た者たちが握っていたという。世界の支配権を握ったのは、南・東シナ海、地中海、ペルシア湾の周辺に位置する国で、風力を上手く利用する安全性の高い大型船が登場すると、世界の支配権は大西洋岸地域へと移行した。

5.石炭と石油をめぐる海の支配 1800年~1945年

18世紀末、最初に海、次に陸地において、すべてが急変した。新たなエネルギー源や船の推進方式により、輸送は一変し、工業化、競争、分業が推進され、ヒト、アイデア、工業製品、一次産品、農産物が大量に移動するようになった。海における人類の存在は、ますます大きくなると同時に、脅威をもたらすようになった。権力は、フランドル、オランダ、イギリスの後、イギリスの必死の阻止をはねのけてアメリカと、またしても他の海洋国へと移動した。

5.コンテナによる船舶のグローバリゼーション 1945年~2017年

「人類にとって、海はこれまで以上に生活に欠かせない存在になった。」(p.214)

海に関する産業は、今日でも食品産業に次いで人類の二番目の経済活動で、食品産業も部分的に海と関連している。そして、二つの世界大戦後に経済成長を促すには、つまり、海が人々の望む力強い経済成長の基盤になるには、モノを運ぶための、ちょっとした工夫が必要だった。

[感想]

本書はタイトルからも分かるように、海からみた壮大な文明論です。著者が内陸国のフランス人というのも面白いです。そして、ここで紹介したのは歴史のみで、本書には未来の海についても豊富に記述があります。むしろ、そちらに重きを置いている印象です。著者は、消費者の立場からだけでなく、海に魅了されながら海とともに暮らすべきだといいます。冒頭にも書いたのですが、私がいつも傷心した時に行くのが海です。海をみていると、すべてを包み込んでくれるような気がします。そんな海を守るためにプラスチックを一切使わないだとかは難しいですが、減らすとか意識を変えていこうと思わされました。