きのみきのまま

女子大生の読書備忘録

『共産党宣言』マルクス エンゲルス

少し前に指導教授から薦められた本です。前から読もう読もうと思ってたものの、引き延ばしにしていた一冊。岩波文庫に手をだすものの、小説とかに比べて読むのに時間かかってしまうのがいまの悩みです。

マルクス・エンゲルス 共産党宣言 (岩波文庫)

マルクス・エンゲルス 共産党宣言 (岩波文庫)

  • 作者: マルクス,エンゲルス,Karl Marx,Friedrich Engels,大内兵衛,向坂逸郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1971/01/01
  • メディア: 文庫
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カール・マルクス(1818~1883)

ドイツ・プロイセン王国出身の哲学者、思想家、経済学者、革命家。

フリードリヒ・エンゲルス(1820~1895)

ドイツの社会思想家、政治思想家、ジャーナリスト、実業家、共産主義者、軍事評論家、革命家。

1.『共産党宣言』の誕生

共産主義communism(コミュニスム)の語源は、ラテン語のコムーネ(commune)からきていて、財産を共有するという意味があり、社会主義思想の範囲に含まれる。共産主義という言葉が使われ始めた当初は、社会主義と同じような概念で使われていた。1847年にロンドンで開催された共産主義者同盟の第二回大会の後、本部の催促によって書かれた小冊子が本著。1848年に刊行され、共産主義という語が社会主義と明確に区別されるようになるきっかけとなった。

2.自由競争への批判

「ブルジョア階級は、生産用具を、したがって生産関係を、したがって全社会関係を、絶えず革命していなくては生存しえない。」(p.46)

100年以上前に、このような指摘ができるマルクスならびにエンゲルスの慧眼に驚かされる。特に、第一章「ブルジョアとプロレタリア」で書かれている、グローバル化と新自由主義を思わせる経済活動に対する批判の数々に驚かされる。

3.「もっとも進歩した国々」での諸政策

  1. 土地所有を収奪し、地代を国家支出に振り向ける。
  2. 強度の累進課税。
  3. 相続権の廃止。
  4. すべての亡命者および反逆者の財産の没収。
  5. 国家資本および排他的独占をもつ国立銀行によって、信用を国家の手に集中する。
  6. すべての運輸機関を国家の手に集中する。
  7. 国有工場、生産用具の増加、共同計画による土地の耕地化と改良。
  8. すべての人々に対する平等な労働強制、産業軍の編成、特に農業のために。
  9. 農業と工業の経営を結合し、都市と農村との対立を次第に除くことを目ざす。
  10. すべての児童の公共的無償教育。今日の形態における児童の工場労働の撤廃。教育と物質的生産との結合、等々、等々。

(p.75-76)

[感想]

広辞苑で「共産主義」を引くと「私有財産制の否定と共有財産制の実現によって貧富の差をなくそうとする思想・運動」と書いてある。本著では、「実践的にたえず推進する」組織拡大と「理論的に大衆に先んじる」イデオロギー的純粋性の両立の困難を提起している。マルクスとエンゲルスは、市場経済主義の発展で自由競争が過激になっていくにつれて人間がまるで機械のようになっていき、人間関係までも希薄となっていくことを危惧していると思った。なんとなくでしか理解していなかった共産主義という言葉と、当時生きた人々を惹きつけたものに触れることができてよかった。