『自殺について』ショウペンハウエル
タイトル買いしました。私は吉本ばななさんの『キッチン』の主人公のように、私も「自分がいつか死ぬということを感じ続けていたい。でないと生きている気がしない」。決して、自殺したいわけではない。
- 作者: ショウペンハウエル,Arthur Schopenhauer,斎藤信治
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1979/04
- メディア: 文庫
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ショウペンハウエル(1788~1860)
ドイツの哲学者。実存主義の先駆者であり、生の哲学者。
1.我々の真実の本質は死によって破壊せられえないものであるという教説によせて
「生は夢なのであって、死はまた目覚めである」(p.14)
こういう発想はなかった。なるほど、無から生という夢が始まって無に戻ると考えるのか。
2.現存在の虚無性に関する教説によせる補遺
「未だかつて、現在のなかで、自分は本当に幸福だと感じた人間は一人もいなかった、――もしそんなのがいたとしたら、多分酔っぱらってでもいたのだろう。」(p.45)
いくら何でもそんなことはないだろう。私は、酔っぱらっているのかもしれない。
3.世界の苦悩に関する教説によせる補遺
「世界はまさしく地獄にほかならない。そして人間は一方ではそのなかでさいなまれている亡者であり、他方では地獄の鬼である。――」(p.62)
生きてるこの世界が地獄かもしれないとは確かに考えたことがあるが、言いきるのは流石といったところ。もしかしたら天国かもしれないし、ゲームの世界かもしれない。死んだあと、ENDという文字とともにVRゴーグルを外す本当の私がいることを想像してみたりする。
4.自殺について
「生命の断末には何かしら積極的なものが含まれている、即ち肉体の破壊である。」(p.80)
当たり前だけど、なるほどと思った。
5.生きんとする意思の肯定と否定に関する教説によせる補遺
「人間の到達しうる最高のものは、英雄的な生涯である。」(p.99)
本著はここでも「幸福な人生などというものは不可能である」と言い、報いのない英雄的な生涯を送ることならできると説く。私もこれと近いことを考えていて、楽しい人生を送るには、楽しい人生を演じるほかないと思っている。結局、心の持ち方ひとつで物事って良くみえたり悪くみえたりする。
[感想]
まず、翻訳されたものということもあり、日本語が読みにくい。とても長い修飾句や、どことどこがつながっているのか読んでいて分からず、読むのに時間かかってしまった。他の本を読まないと、この本の理解はきっとできないんだろうなと思った。表紙にある「自殺について」は10ページ分しかないのが、少し期待外れだった。本著は、自殺について明言はしないものの否定的に捉えているが、展開される厭世主義に心が少しやられた。いまの私は、明るい本がとても読みたくなっている。