きのみきのまま

女子大生の読書備忘録

『地元経済を創りなおす――分析・診断・対策』枝廣淳子

度々一極集中が問題となり、地方との格差が話題になります。本書では持続可能で幸せなものにするためにどうしたらいいのかと考えていきます。「未来は地域にしかない」という考えに、私は共感しました。

地元経済を創りなおす――分析・診断・対策 (岩波新書)

地元経済を創りなおす――分析・診断・対策 (岩波新書)

枝廣淳子(??~)

東京都市大学環境学部教授、幸せ経済社会研究所所長。

1.なぜいま、地域経済か

研究では、AIによるシミュレーションが描き出した2052年までの約2万通りの未来シナリオを分類すると、傾向が大きく2つに分かれることがわかった。

  • 都市集中シナリオ」――「主に都市の企業が主導する技術革新によって、人口の都市への一極集中が進行し、地方は衰退する。出生率の低下と格差の拡大がさらに進行し、個人の健康寿命や幸福感は低下する」というもの。
  • 地方分散シナリオ」――「地方へ人口分散が起こり、出生率が持ち直して格差が縮小し、個人の健康寿命や幸福も増大する」というもの。

さらに「今から8~10年後に、都市集中シナリオと地方分散シナリオとの分岐が発生し、以降は両シナリオが再び交わることはない」ことが明らかになったという。

2.あなたの地域は「濡れバケツ」?

「地域経済間のつながりとやりとりはこれからも重要であり続けるけれど、いまの地域経済に残るお金が増え、地域経済の活性化や地域の人々の幸せにつながるのではないか」(p.23)

地域経済とそこでやりとりされるお金を、「バケツ」と「水」にたとえて説明します。「いかに地域にお金を持ってくるか」よりも「いかに地域から出ていくお金を減らすか」を考えていくべきだという。

3.身近な「濡れ穴」をふさぐ

「(地消地産率が)高まった分だけ地域経済の濡れバケツの穴をふさぐとともに、地元の産業や誇り、絆、笑顔など、多くの幸せをも生み出しているのです。」(p.83)

その地域にあった体制をつくり、農業者や学校・給食センター、間をとりもつ調節役の機関など、それぞれの立場かた地場の農産物の調整拡大に努める「学校給食を地消地産で」という取り組みが紹介されている。また、地場産野菜を使う上での苦労も紹介されている。

4.「最大の濡れ穴」をふさぐ

「私たちの暮らしも産業も、つまり地域経済は、電気、ガス、ガソリン、重油、軽油、灯油といったエネルギーなしには機能しません。どの地域も、そのエネルギーの多くを海外から輸入する化石燃料に頼っていることが、『最大の濡れ穴』となっています。」(p.97)

著者は、地域のエネルギー自給の取り組みは、地域経済にとって大きな力となり得るという。地域経済によっては、「地域の、地域のよる、地域のための再エネ開発」が非常に重要で、岐阜県郡上市の石徹白地区や、山都町水増集落が例として紹介されています。

[感想]

私が、特に印象に残ったのは「地産地消」の考え方を、「地域でできたものを地域で食べよう」ではなく、「地域で消費しているものを地域でつくろう」で捉える考え方です。「地産地消+域内循環向上=所得が確保できる新規事業→定住」という、この地域創生のお手本となる考え方は記憶しておきたい。そして、地域経済の「バケツ」の漏れ具合を調べる方法、濡れをふさぐさまざまな考え方や取り組みについて解説されている。私自身も地方に生まれ、進学で都内に住んでいるので考えさせられる部分は大きかった。