『麺の科学 粉が生み出す豊かな食感・香り・うまみ』山田昌治
麺というと、私はラーメンをイメージします。うどん、素麺、蕎麦、スパゲッティなどたくさんの麺に溢れています。もはや文化ですね。本書は、麺という食文化のすばらしさを科学の視点で伝えてくれます。
麺の科学 粉が生み出す豊かな食感・香り・うまみ (ブルーバックス)
- 作者: 山田昌治
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2019/07/18
- メディア: 新書
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山田昌治(1953~)
京都大学工学部化学工学科卒業。同大学院修士課程修了。
1.小麦粉、蕎麦粉、米粉、麺を作る粉の科学
麺の原料である穀物の粉について述べる。もともと穀粒をそのまま粥状にして食べていたが、おいしさを追求するうちに、粉砕して、原料によっては皮部を取り除き、湯餅やすいとんといった塊状で食べるようになり、さらに、塊が麺に進化した。現在では世界各地に小麦粉、米粉、そのほかのデンプンを主原料、副原料にした多種多様な麺があり、日本でもさまざまな麺を食べることができる。
2.こんなにある! おいしい麺いろいろ
素麺、冷や麦、うどん、きしめん、中華麺、パスタ、日本蕎麦を紹介する。特に、中華麺として、ラーメンに加えて焼きそば、アジアの各地で食べられている麺の解説は興味深かった。また、アジアではライスヌードルが日常生活の中に入り込んでいて、ライスヌードルを使った料理も知らないものばかりだった。
3.麺の栄養学
低糖質ダイエットの記載で、脳のエネルギーはグルコースからしか得られないので、糖質を制限しすぎないことが大切だということを知れたのは為になった。グルコースを遮断す食生活でもエネルギーを作り出す仕組みがあって、ケトン体を合成して脳にエネルギーを送り込んでいる状態は、飢餓状態らしい。
[感想]
本書は、身の回りの食べ物にもサイエンスがあることを教えてくれます。余裕があれば自炊しているんですが、今日からでも使える技がいろいろ紹介されています。麺とは何て素晴らしい世界なのだろうと思いました。私は文系で生きているので、化学の知識がもっとあれば良かったかなと思いました。
『おぞましい二人』エドワード・ゴーリー
私は幼い頃に絵本を読んだ記憶はないです。ということは、物心ついて初めて読んだ絵本はこの作品になるのでしょうか。紹介してもらって興味を持ったのですが、エドワード・ゴーリーを初めて知りました。
- 作者: エドワード・ゴーリー,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2004/12/21
- メディア: 単行本
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エドワード・ゴーリー(1925~2000)
シカゴ生まれ。独特な韻を踏んだ文章と、独自のモノクローム線画でユニークな作品を数多く発表している。
1.内容
1965年に明るみに出た「ムーアズ殺人事件」。イギリスで、イアン・ブレイディ、マイラ・ヒンドリーという男女が4年にわたり5人の子供を残虐に殺して荒野(ムーア)に埋めていた事実が明らかとなった。2人は投獄され、ゴーリーがこの本を書いた時点では2人ともまだ服役中であった。「もう何年も本の中で子供たちを殺してきた」と自ら言うエドワード・ゴーリーが、この現実に起きた悲惨な事件によって心底動揺させられ、描いたものある。
2.エドワード・ゴーリー
絵本という体裁でありながら、道徳や倫理観を冷徹に押しやったナンセンスな、あるいは残酷で不条理に満ちた世界観と、徹底して韻を踏んだ言語表現で醸し出される深い寓意性、そしてごく細い線で執拗に描かれたモノクロームの質感のイラストにおける高い芸術性が、「大人のための絵本」として世界各国で熱心な称賛と支持を受けている。 また、幻想的な作風とアナグラムを用いた(Ogdred Wearyなど)ペンネームを幾つも使い分けて私家版を出版したことから、多くの熱狂的なコレクターを生み出した。2000年4月15日、心臓発作のため死去。享年75歳。
3.エドワード・ゴーリーの他の作品
『ギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとで』
- 作者: エドワードゴーリー,Edward Gorey,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2000/10/01
- メディア: 単行本
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名前にAからZまでの頭文字をもつ26人の幼い子たちが、それぞれに死んでいく話。
『不幸な子供』
- 作者: エドワードゴーリー,Edward Gorey,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2001/09/01
- メディア: 単行本
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裕福な両親のもとで暮らしていた女の子が、父親の死をきっかけに不幸のどん底に転落していく話。
[感想]
彼の他の作品も何冊読んでみました。上に紹介していますが、『ギャシュリークラムのちびっ子たち』は子供たちがアルファベット順に死んだり殺されたりする絵本で、『不幸な子供』は父親がそうとは知らず娘を轢き殺すという結末の絵本でした。それらは現実性を帯びていないのですが、この作品は現実に起きた出来事を、その事件を起こした2人の一生をなぞっています。この作品が伝えたいこととはズレているかもしれませんが、考えもつかないような悲惨な事件を犯す人間は、普通の人間であることだということを感じました。私は大学で法律の勉強をしていますが、犯罪を実行する人は生まれ育った環境が起因することが多いと感じています。犯罪者を肯定するわけではないですが、トルストイの「幸せの家族はどれもみな同じようにみえるが、不幸な家族にはそれぞれ不幸の形がある。」という言葉を思い出しました。
『ネットフリックスの時代――配信とスマホがテレビを変える』西田宗千佳
小学生の頃と比べて、テレビは見なくなってしまいました。私自身はネットフリックス契約していませんが、本書では、それに代表される映像の見方の変化が、我々の生活にもたらす影響を考察してあります。
ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える (講談社現代新書)
- 作者: 西田宗千佳
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/10/16
- メディア: 新書
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西田宗千佳(1971~)
福井県生まれ。ネットワーク、IT、先端技術分野を中心に活躍するフリージャーナリスト。
1.ネットフリックスの衝撃
「ネットフリックス関係者は、ことあるごとに『我々は放送を置き換えようとしていない』と話す。」(p.39)
ニュースやスポーツ、バラエティのようなリアルタイム性の高いものは放送に向いており、ネットフリックスも手に出していない。しかし、映像を楽しむためのコスト構造の違いは、確実に、着実に放送にも影響を与えている。
2.迎え撃つ「ニッポンのSVOD」
「Huluでは(「妖怪ウォッチが」)放送初期から、テレビ放送後すぐに公開されるというかたちになっていた。」(p.63)
家事をしている時、Huluでの「妖怪ウォッチ」配信で、子どもたちだけではなくその親たちが喜んだ。そういうニーズが存在するのはごまかしようのない事実で、そうした視聴環境の変化こそが、VODというビジネスが我々にもたらす本質的な価値と言っても過言ではないという。
3.「テレビを見ない」時代と「イッキ見」
「それをどんな感覚で消費するかは、もはや消費者が決めることだ。」(p.107)
スマートフォンと高速ネットワークの普及により、どんどん「待つ」のが苦手になっている。小説やコミックの新刊を読み終わると、続きが半年後ではもう忘れてしまう。テレビの持つ「毎週」というサイクルも、ネットのスピードの前では「遅い」と言われてしまう。
4.音楽でなにが起こったか
「ディスクであろうがデータであろうが『所有するものを買う』スタイルだったものが、『聴くための権利を手に入れる』スタイルに変わろうとしているのである。」(p.115)
物理的な円盤を買う、というかたちがダウンロードに変わることは大きな変化である。流通が変わるということは、それを聴くための機器の市場も、曲を売るためのマーケティングも変わる。音楽と比べて映像ビジネスは、「同じ映像を1回しか見ない人が大半であることを軸にした興行」であり、そのうえに「愛着を持ったコンテンツを何度も消費したい人向け」のビジネスが重なる構造である、ということ。
5.「イッキ見」と「放題」で変わるコンテンツ
「見逃し配信やSVODの登場は、なにかを破壊するものではなく、生活の変化のなかで『静かに離れていく顧客』を引き止めるものであり、新しい消費スタイルを生み出すものだ、と筆者は考えている。」(p.216)
多様化にともなうコンテンツへの触れ方の変化こそが、いま起きていることの本質であり、そうしたことを軸に、機器や新たなコンテンツ、そして販売方法を考える時期に来ているという。そんな時にも、「コンテンツの中身が良くなければヒットしない」という原則は変わらない。
[感想]
2015年に執筆されたものですが、未だその変化にいることを実感しています。私自身も、音楽や映像を人並み以上楽しんでいますが、確かに楽しみ方が変わってきました。観ていたドラマは「TVer」で見逃し配信をみたり、買っていた音楽も今では「Apple Music」で流行りから懐かしい楽曲まで聴いています。まだテレビを見ている層も多いですが、これからどう変化していくのか少し楽しみでもあります。インターネットの技術が進むことで、何が変わるのか、また、ビジネスをしている人達は、何が変わろうとしているのかを見ているのか、それらに触れることができる面白い本でした。
『センスある日本語表現のために―語感とは何か』中村明
「語感」って何かと聞かれると、説明するのは難しいですよね。感覚的な言語論を超えた語感の整理・分析は、いかに行なわれ得るのか。本書は、豊かな言語生活を楽しむヒントを提供してくれる内容でした。
- 作者: 中村明
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1994/08
- メディア: 新書
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中村明(1935~)
山形県鶴岡市に生まれる。早稲田大学大学院修了。早稲田大学教授。
1.ことばのひろがり
「日本語の語彙はまことに多種多様なことばの寄り合い所帯であったことに、あらためて驚く。」(p.16)
「えびフライ」「お子様ランチ」「ペン皿」のような和語と外来語との結びつきや、「貸切り観光バス」のような和漢洋の結びつきでできた混種語まである。おまけに、「テーマソング」はドイツ語と英語、「ヘアサロン」は英語とフランス語というように、別々の国のことばを結びつけて造った語もある。他にも、「テーブルスピーチ」「アフタースピーチ」のように英語の単語を部品として組み立てた、本場で通じない和製英語や、「ナイター」のように英語を加工した、いわば国産英語もある。
2.語感とは何か
事典に従って意味・用法を確認する。
- 類義語の微妙なニュアンスの差を感じ取る能力
- ある語が支持する対象的意味以外に、その語がもつ感じ
3.語感の環境
「どんな表現をとるうか、そこに趣味や性格や態度や教養や言語感覚や、その他もろもろの人の在り方が映るかもしれない。考えると恐ろしいことだ。日ごろから語感をみがき、一瞬一瞬、透明な心で対象に向かうほかはない。」(p.215)
何で笑うかでその人間の人柄がわかるとフランスの劇作家、マルセル・パニョルは言ったが、それは表現する場合でも同じことだと思う。ことばは、それがさす意味を伝えるとともに、そういうことばで伝えようとしている人間をも伝える。
[感想]
本書のあとがきには、「人とことばとのふしぎなかかわりについて考え、日本語のゆたかさ、やさしさを味わい、そうして、すっきりした表現の奥に、ことばの知性と感性の微妙なバランス感覚が働いていることを感じてくださるよう」と書いてあります。本書には「語感」に関する用例が実に豊富にとりあげられています。「語感」の研究はあまり進んでいないらしいし、文献も少ないようです。様々なことばを比較されており、感覚的に使い分けていたことばが、このように言語化されて説明されるとなんだか嬉しい気持ちになりました。
『アスペルガー症候群』岡田尊司
この本を手にとったことには理由があります。その理由については感想の部分で書こうと思いますが、アスペルガー症候群の人とどう付き合っていくかのヒントを探すためにこの本を読んでまとめてみました。
- 作者: 岡田尊司
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2013/05/31
- メディア: Kindle版
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岡田尊司(1960~)
香川県生まれ。精神科医。医学博士。東京大学哲学科中退。京都大学医学部卒。
1.アスペルガー症候群とはどんなものか
アスペルガー症候群とは、それを最初に報告したオーストラリアの小児科医、ハンス・アスペルガーにちなんで名づけられたものである。興味深かったのは、親と教師の間でしばしば評価の食い違いや対立が見られることにも触れている。親はわが子の独創的でユニークな発想から知的能力が高いと考えるが、教師は学校の勉強に関心を示さなかったり、教えられた通りにやらなかったりするため、低い評価をしがちらしい。注目すべき点は、アスペルガーが、このタイプに備わっているデメリットとなりやすい傾向だけでなく、大きな価値を生み出す可能性にも着目していることである。
2.アスペルガー症候群の症状とはどのようなものか
3つの大きな症状とは
- 社会性の障害
- コミュニケーションの障害
- 反復的行動と狭い興味――一つのことに囚われ続ける
その他の特性や伴いやすい問題とは
- 感覚が繊細である
- 動きがぎこちなく、運動が苦手な人が多い
- 端整な容貌と大きな頭をもつ
- 整理整頓が苦手で、段取りが悪い
- 癇癪やパニックを起こしやすい
- 夢想や空想にふける
- 小さい頃、「注意欠陥/多動性障害」と診断されることもある
- 不安やうつなどの精神的な問題を抱えやすい
3.アスペルガー症候群と七つのパーソナリティ・タイプ
青年期から成人期に見られるタイプ
- 他人に関心が乏しいシゾイドタイプ
- 傷つくことを恐れる回避性タイプ
- 発想豊かだが変わり者に見られるスキゾタイプ
- 細部にこだわる強迫性タイプ
- 自分が大好きな自己愛性タイプ
- アイデンティティが揺れ動く境界性タイプ
- 思い込みに囚われる妄想性タイプ
4.アスペルガー症候群とうまく付き合う
- 枠組みをしっかり作り、ルールをはっきり示す
- 過敏性に配慮する
- 本人の特性を活かす
- 弱い部分を上手にフォローする
- トラブルを力に変わる
5.進路や職業、恋愛でどのように特性を活かせるのか
アスペルガー症候群の強みとなる特性とは
- 高い言語的能力がある
- 優れた記憶力と豊富な知識がある
- 視覚的処理能力が高い
- 物への純粋な関心がある
- 空想する能力がある
- 秩序や規則を愛する
- 強く揺るぎない信念をもつ
- 持続する関心、情熱をもつ
- 孤独や単調な生活に強い
- 欲望や感情におぼれない
6.アスペルガー症候群を改善する
- ソーシャル・スキルズ・トレーニングは活用度が高い
- 言語療法を行い、会話のスキルを高める
- 行動を分析し、メッセージを読み取る
- 症状に応じて薬物療法を行う
- 作業療法やデイケアを行う
- 遊びを通して社会性を養う
- 一対一でのカウンセリングを行う
- 家族を支える
[感想]
私は、友人にこういうことで悩んでいると相談された時に、なんとなく「アスペルガー症候群じゃない?」と言ってしまいました。これをどう思われるか分かりませんが、私はひどいことを言ってしまったと思いました。友人からは後日「ネットで調べたら私と一致しすぎてこわい」と言われて、ますます罪悪感でいっぱいになりました。その友人はそれを気にしていないのが幸いですが、過去にもどって発言をなかったことにしたいとさえ思います。この本は、とても勉強になりました。