きのみきのまま

女子大生の読書備忘録

『なぜ世界は存在しないのか』マルクス・ガブリエル

哲学は興味あるけど、難しそうで手が伸びません。そんな私が買ってみたのが本著なんですが、何ヶ月間も寝かせておりました。何か読みたいと思った時に本著と目があったので、この機会に読んでみました。

なぜ世界は存在しないのか (講談社選書メチエ)

なぜ世界は存在しないのか (講談社選書メチエ)

マルクス・ガブリエル(1980~)

哲学者。現在、ボン大学教授。

1. なぜ世界は存在しないのか

形而上学・・・この世界全体についての理論を展開しようとする試みで、初めて世界を発明した。

  1. 宇宙は物理学の対象領域である。
  2. 対象領域は数多く存在している。
  3. 宇宙は、数多くある対象領域のひとつにすぎず(大きさの点で最も印象的な対象領域であるとしても)、したがって存在論的な限定領域にほかならない。
  4. 多くの対象領域は、話の領域でもある。さらにいくつかの対象領域は、話の領域でしかない。
  5. 世界は、対象ないし物の総体でもなければ、事実の総体でもない。世界とは、すべての領域の領域にほかならない。

(p.74)

「存在しているのは、無限に数多くの意味の場だけです。」(p.106)

「存在すること=何らかの意味の場に現象すること」(p.108)

2.宗教の意味

「宗教とは『判断と考察とにおける最大限に無制限な多面性への資質』である」(p.211)

これはシュライアーマッハ―の考えです。人間は、自分自身が何か知らないが上に、探究をはじめるという。自らを探求することができるためには、自らを失っていなければならず、存在そのもののなかに距たりがある。その最大限の距たりの体験が、「神」ないし「神的なもの」として体験する。その神的なものという形態のなかに自分を追い求めていくというのは興味深い指摘に思える。

3.芸術の意味

「芸術の意味は、わたしたちを意味に直面させることにあります。」(p.245)

芸術は、わたしたちにイメージを示してみせてくれ、わたしたち人間の身体や脳を刺激する特定の様式という。私はよく美術館にいくことが好きなんですが、「どこが好きなんですか?」と聞かれると言葉に詰まってしまう。今度から「新たな意味でわたしを驚かせ、日常とは違った角度から対象を照らしてくれるから」って言おうかなと思った。

[感想]

読んだ最初の感想は、哲学は難しいということです。哲学者は「地球外生命体のように、あるいは子どものように世界を観察」(p.31)するらしい。本著のタイトルである『なぜ世界は存在しないのか』という著者の理論は分かった。「存在する」とは、あるものが「なんらかの意味の場において現象する」ということである。一方「世界」というのは、「あらゆるものを包括する全体」である。「あらゆるものを含む全体」が「なんらかの意味の場において現象する」ことはあり得ない。よって「世界は存在しない」。結構読むのに時間かかりました。