きのみきのまま

女子大生の読書備忘録

『残業税 マルザ殺人事件』小前亮

最近、働き方改革という言葉をよく聞くようになりました。短編集『残業税』の続編の長編小説で、マルザと呼ばれる残業税調査官が殺された!ところから話が進みます。働くことについて考えさせられます。

残業税 マルザ殺人事件 (光文社文庫)

残業税 マルザ殺人事件 (光文社文庫)

小前亮(1976~)

島根県生まれ。東京大学大学院修士課程修了。

1.あらすじ

残業をすればするほど取られる税金が増える「時間外労働税」が導入された。残業時間は劇的に減って、社会のありようは変わりつつあった。だが、もっと働かせたい企業も残業したい労働者も多く、サービス残業という「脱税」は絶えないのだが…。根っから真面目な残業税調査官と熱血労働基準監督官が働く人たちのために奮闘する、リアルすぎるお仕事ミステリー。

2.残業税

「残業税の議論がはじまったのは、労働者を搾取するブラック企業が話題となり、デフレの脅威が語られていた時期である」(p.16)

「制度の目的が、過剰な労働を抑制して、国民の健康を取りもどし、クオリティオブライフをあげること」(p.16)

残業税は労働者も使用者も負担するようになっていて、さらに累進税のかたちをとっている。簡単にいうと、残業時間が増えるにしたがって、双方の負担が増えていき、残業がコストに見合わなくなっている。労使折半の規定により、残業へのモチベーションを失わせて、脱税の告発を促すものでもあるらしい。

[感想]

残業税は、面白い思考実験だと思った。架空の法律だけれども、最近大手企業で実際に問題になった労働時間に関して、企業と労働者自身がこれから向きあう社会問題でもある。あと世論に叩かれながらも、働く人を守るべく奔走する調査官が良かった。働くことの意義についても考えさせられた。