『特殊清掃 死体と向き合った男の20年の記録』特掃隊長
自分の知らない世界を知ることが好き。おそらく自分が就くことがないであろう職業の体験談は興味深く、読んでみたくて購入した。グロいものは苦手で少し心配してたけど、本著と向き合うことができた。
- 作者: 特掃隊長
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2013/02/13
- メディア: Kindle版
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特掃隊長(??~)
ヒューマンケア株式会社ライフケア事業部所属。1992年から遺体処置・湯灌納棺・遺体搬送・遺品処理・ゴミ処分・特殊清掃・消臭消毒・消臭消毒・害虫駆除業務に従事し、現在は特殊清掃部門を担当。
1.特殊清掃
仕事の内容は、人間遺体・動物死骸・糞尿・山積ゴミなどに関係する特殊な汚染汚損を処理するというものらしい。著者は、重い不幸感の反動と珍業への好奇心で就業して、「非日常的な経験と思慮を要する体験が積み重なり、固有の死生観と人生観が養われ」たと語っている。
2.人体が腐敗した痕
「私の人生は、どんな夢の痕を残すのだろうか。」(p.22)
「人は腐ると溶ける」という本書でよく見られる表現は、現場の生々しさだけでなく「死」を感じさせてくる。こうした溶けた人は、死の現場に「腐敗液」として強烈な臭いと共に残る。長く放置された現場がゴミ屋敷だったり、風呂場での出来事であったりすれば、そこには、無数のウジが湧き、現場はハエで満ちてしまう。本著では、人が忌むことによって避けてきた「死の現場」を生々しく描写する。
3.メメント・モリ
「自分の死を考えることは有意義なことだと思う」(p.187)
中世ヨーロッパで盛んに使われたラテン語の警句で、「メメント・モリ(死を思え、死を忘れるな)」という言葉がある。私の座右の銘でもある。でも、人によっては死が恐くてたまらないという人もいる。ここで著者は「いまを大切に生きる」ことを意識して生きていく大切を説きたいのだと思うが、私はちょっと違う。「死」を考えながら生きている自分に酔っている。なんというか、人生を幸福に感じながら生きていくために酔っぱらっているような感じに近い。
[感想]
特殊清掃という職業は知っていたけれど、自分には関係ない世界だと思っていたことに気づかされた。私自身は、死ぬまでにあと何回この人と会うことができるだろうとか、明日トラックに轢かれて死ぬとしたらその一瞬で何を考えるだろうとか、常々考えていたが、死んだ後の自分の体について思いを巡らすことは少なかったように思える。私は「死」を想像しながら生きているけれど、本著は「死」を日常的に接している人の「死」の捉え方でとても考えさせられた。