きのみきのまま

女子大生の読書備忘録

『AI社会の歩き方―人工知能とどう付き合うか』江間有沙

人工知能は社会にどのような変化を起こすのかを、感情論に流されず、その舞台裏を含めて整理されています。だれがどんな議論をしているか、今後どのような議論が重要かを教えてくれるような本著でした。

AI社会の歩き方―人工知能とどう付き合うか (DOJIN選書)

AI社会の歩き方―人工知能とどう付き合うか (DOJIN選書)

江間有沙(??~)

2012年、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。

1.社会の中の人工知能

「人間と機械が仕事を奪い合うのではなく、協働が重要であるともいわれます。」(p.134)

機械に奪ってほしいタスクがある一方、機械か人間どちらに対応してほしいか意見が別れるものもある。本著では、清掃と資源配分、教育とモチベーション、介護ロボットと雇用問題、裁判官ロボットと民主主義、自動運転と街づくりといった例を挙げています。

2.人工知能が浸透するとき

「人工知能やロボットが人間の生活に入り込むとき、トロッコ問題のようなさまざまジレンマ状況が生じます。」(p.195)

トロッコ問題とは、条件の違う命の重みを二つ提示され、どちらの命ならトロッコでも轢いてよいのかという問題。人間であっても答えるのが難しい倫理的な問題をどのように判断させたり、学習させていくかなど、機械自らが自律的な判断を下す汎用人工知能が実現できるか、という研究にも展開するとのこと。

3.人工知能とどう付き合うか

「技術開発者によるシーズと現場のニーズがうまくかみ合うことによって、新たな価値観や使われ方が生まれてきます。」(p.234)

技術は社会に”役立つ”ことをめざしてつくられていて、さまざまなネットワークの中から「人工知能と社会」の関係性が形づくられている。多様性の中に身を置き、新しいアイディアやきっかけを得られるから、さまざまな場所で人工知能の社会的な影響について対話の場が必要である。

[感想]

人工知能が浸透した社会を考えることは”どういう社会にしたいのか”を考えることに繋がるという。それは「人工知能やロボットは私たちの社会がもつ倫理観や社会的な規範、あるいは欲望を映し出す鏡だから」(p.239)と続ける。私が考えているよりも複雑化していて、例えば自律型致死兵器システムがつくられる前に禁止しよう!という議論もある。人工知能と上手く関わっていくために、多角的な視点が必要ということを感じた。